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咲良の夢

 こいつらならまあ……信じてもいいか。
そう思った。
 こいつらの笑顔に。抱える過去に。なにか感じるものがあった。まあ、同情、なんて類のものじゃあない。俺はそんな感情を抱ける人間じゃない。

 「やめっ、やめてよ!ねぇったら!」
 目の前にはクスリに酔った大男。忌々しいくらいに、俺に似た。父親というもの。
 ああ、これは夢だ。そう分かった。
 大男の下には小さな少年。怯えきった顔で大男を見上げて叫ぶ。
 「やめて!お父さん!やめて!」
 この少年は俺だ。昔の……
 俺は大男に組み敷かれ身動きもとれずに泣き叫ぶ少年を、ただだだ、冷たい片目で見下ろした。これは夢だ。どうすることもできない。このあと、少年に何が起こるのかも分かっている。それでも何もできない。何もできないと分かっている。けれど、【逃げろ】と。【逃げてくれ】と。俺は無意識に祈っていた。見たくなかった。

 大男の右手には光を反射してキラリと光る鋏。

やめろ

 大男はまっすぐ腕を振り上げた。

やめてくれ!

 大男の腕を掴もうと手を伸ばしても、掴めない。すり抜けてしまう。

 キラリと光る鋏を持つ手は振り下ろされた。

「あ、あああ、ああああああああああああああああああっ」
 悲鳴、鳴き声、断末魔。痛いくらいの声が耳をつんざく。
 目の前の少年は未だ大男の下。腕を動かすことも叶わずただ叫び続けている。

 痛い、と。そう伝えたいのに言葉にならない。
 どうすることもできずに、少年から目をそらす。見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない
 右目がズキズキと痛む。これは夢なのに、傷つけられたのは俺じゃないのに。痛い。いや、傷つけられたのは俺だ。間違いなく過去の自分自身だ。
 もういやだこんな夢。早く起きたい。
 俺は目を瞑り、耳を塞ぎ、その場にうずくまった。

「……………ら……さく…」
「う、ううん…や、め…」
「咲良兄さん、ねぇ、咲良兄さん!」
「ん、美羽……?」
 目を開けるとそこには心配そうに俺をみる美羽がいた。
 ああ、よかった。夢から覚めることができた。
「咲良兄さん、大丈夫?なんだかうなされてたけれど……」
「あー、うん、大丈夫。ちょっと昔の夢みてた」
「昔……」
 そう言うと美羽は押し黙ってしまった。
「もうすんだことだ、気にすることじゃない。それに今はもう大丈夫だから」
 そう言って笑うと、美羽は余計に泣きそうな顔をする。そして、俺に抱きついてきた。
「美羽?」
「辛いときは言ってね。こんなことしかできないけど…それでも、少しは楽になるはずだから…」
「……うん。ありがとう、美羽」
 美羽の頭を撫でると、美羽は体を離し、満足げに笑った。

「ところで、右目は大丈夫?」
「え?」
「志蕗が眼帯の上にどれだけブロック乗せられられるか遊んでたみたいだったから……」
「………。大丈夫だ。志蕗は?」
「え?んーと、さっき颯天のところへ」
「ありがとう、行ってくる」
「え、ちょっと、咲良兄さん?」
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[ 2013/07/18 14:49 ] 小説 針野家 | TB(0) | CM(0)

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