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青空*颯天's Story*

言葉が僕にはわからない。
あ、今何人か「バカ」だとおもったでしょ。
・・・まあ、否定はしないかな。間違いじゃないし。
【言葉がわからない】というのは語弊を招きそうだけれど。
正確には、【言葉に隠された心を読み取れない】。

ほら、みんなにも覚えがあるとおもうけど。
国語のテストなんかで、
【この文から主人公の気持ちを考え書きなさい】みたいな問題。
それが僕にはどうしてもわからなかった。
なんどもなんども読み返した。けれど、それでもどうしてもわからなかった。

ただの文章

それは昔からそうだった。
(なにこれ、「再び見上げた空が青く見えた」?晴れたから、じゃないの?最初は「灰色に見えた」って書いてあるし。)
そう考えてだした答案。それが返ってきたとき、その答には赤いチェックがついていた。
(「主人公の気持ちを考えて見ましょう」、か。)
答案用紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ入れた。

「お、どうした、マヌケ面して」
「うるさい」
「さてはテストの点数悪かったんだろ」
「95点」
「げ、なにおまえ、ばけもんなの?俺なんか42点よ?」

”ばけもんなの?”
その言葉すら、本気に捕らえてしまう。
少しして、”あぁ、これは冗談だ”と気づく。

「へぇ、大健闘だ」
「だろだろ!?・・・て、おい、なんかバカにしてないか?」
「してない、してない」

こういうやりとりができるようになるまでに、10年近くかかった。
たいていの人は、「冗談通じない」って僕から離れていった。
そんな中、幼馴染のこいつだけはずっと僕に話しかけてきた。
もちろん、冗談だっていう。
それを僕が汲み取れなくてなんどもこいつにキレた。
それでも、こいつはヘラヘラ笑って「冗談だよ」って教えてくれた。

それからしばらくしたころ、あいつは学校を休んだ。
(バカでも風邪ひくんだね・・・)
そんなこと考えながら、帰りにあいつの家に寄ることにした。

「よお、颯天!元気そうだな!」
やっぱり帰ろうか。
そう思い、引き返そうとすると腕を掴まれ引っ張られた。
「なに」
「なにって、見舞いに来てくれたんじゃねぇの?」
赤い顔でにっと笑う顔に妙に腹が立つ。
「元気な人に見舞いなんて必要ないでしょ?」
「え、俺!!びょ、う、に、ん!!!」
「病人はそんな大声で話さない」
「えー、てか、ほんと病人なんだけど」
と、少し声のトーンを落とした。どうやら、病人なのはほんとらしい。声が少しかれている。顔が赤いのもおそらく熱があるのだろう。
「はいはい、とりあえず中に入れてくれる?」
「あ、えーと、やっぱうつしちゃ悪いし…」
見舞いしろって言ったり帰れって言ったり、忙しいやつだな。
でも、実際、見舞いに行って、僕まで風邪にかかったりしてはどうしようもない。
「そ、わかった。じゃあ、はい、これ。今日の分のノートと、あとプリント」
「お、サンキュー」
「じゃ、ちゃんと寝てるんだよ」
「なんかお前、母さんみたいだな」
笑いながらかすれた声で言った。
それが妙に痛々しくて、僕は柄でもなく
「死ね」
″冗談″を言ってみた。

知らなかったんだ。
言っていい冗談と言ってはいけない冗談があったなんて。

僕が″冗談″を言うとあいつは一瞬キョトンとした。
でも瞬きをした次の瞬間にはにやり、と心なしかさっきより赤くなった顔で笑って

倒れた。

友人が倒れたのに、僕はいたって冷静だった。
冷静に救急車を呼んで、あいつの家族に連絡して、一緒に救急車に乗って…

いや、冷静じゃなかったのかもしれない。
″本当に死んでしまうのではないか″
そんな思いが頭から離れず、どんどん大きくなり、不安を煽る。

僕が死ねなんて言ったから。
僕が死ねなんて言ったから。
僕が、僕が、僕が、僕が……!!

救急車の中で、僕は苦しそうにするあいつをただじっと祈るような気持ちで見つめるしかなかった。

「よお、颯天!元気そうだな!」
病室の扉を開けると元気なあいつの声がした。
「体調、大丈夫なの」
「ん?おお?颯天ぇ、心配してくれてんのか?」
「うるさい、元気なら帰る!」
そう言って再び扉に手をかけた。
「待てって」
あいつのその声がいつになく真剣な声に聞こえて僕は振り返った。
「ありがとうな、救急車呼んだり、親呼んだり…」
「大したこと、してないよ」
そうだ、大したことなんてしていない。
僕が彼に投げた言葉の重みに比べれば……
「うん、それでも、ありがとう」
「死んじゃうかと、思った…」
「うん」
「突然、倒れて…」
「うん」
「ずっと苦しそうだし…」
「うん」
「僕のせいで…」
「え?」
「僕が、死ねなんて、言ったから…」
「颯天、違う」
「違わない!!」
つい声をあらげてしまった。それでも、
「ほんとに、違うんだって、颯天」
あいつが優しく笑うから、僕は泣きそうになる。けれど、あいつにそれを悟られるのは嫌だからうつむく。
「大丈夫、泣くなよ、颯天」

あいつはいつも笑ってた。
そう、いつも。

写真の中のあいつは笑顔でブイサインを見せている。
その明るい雰囲気とは真逆に、場の空気はどんよりとしていた。

「どうして…ねぇ…これも冗談?」
あいつに向かって話しかける。
あいつは花に埋もれている。
「ねえ、返事してよ。僕、また、冗談が、分からないよ…」
どれだけ語りかけても、あいつからの返事はなかった。

あれから、しばらくたった。
もうあいつのことを引きずってないといえば、嘘になるけど、
それでも、一歩踏み出した。
あいつが最期に笑ってから一年。
ひとりで、春の桜を見た。
夏の蝉の声を聞いた。
秋の紅葉を見た。
冬の雪の中を歩いた。
あいつがいないと、少しだけ、暗く見えた。

春。
こんな僕を笑ってくれる人ができた。
思ってくれる人ができた。
泣いてくれる人ができた。

あいつと同じように、僕のことを構ってくれる人が…。

暗かった空は再び明るさを取り戻した。
あのときと同じように。
あいつと一緒にいたときのように。

今ならあの主人公の気持ちもわかるかもしれない。
見上げた空は青く見えた。
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[ 2013/09/25 00:19 ] 小説 針野家 | TB(0) | CM(0)

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