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【美羽's SS】待ってるの

「わかってるんだけどね、無理だって」

ぽつりとつぶやいた言葉は夕焼けに溶けた。
あまりにも夕焼けがきれいで、泣きそうになる。

「ちくしょう」

☆☆☆

「美羽姉って、ほんま、女の子って感じよな」
鈴乃が呟いた。
「え、なに、突然……」
突然自分の名前が出てきたので、驚いた。
女の子……
自分の胸をみても、悲しいことにそこにはあまり女の子のもつ膨らみはない。
むしろ、その点に関しては鈴乃の方が…
「何怖い顔してるん、美羽姉…」
「う、ううん、なんでも…ない」
「?」
鈴乃が不思議そうな顔をする。
「美羽姉さ、暑ない?」
「え」
どうして?そう美羽が聞くよりも早く、鈴乃が動いた。
「スカート、こんな長いのはいて」
そう言いながら美羽のスカートをめくった。
「なっ、なっ、」
突然のことに言葉がでない。
この子のすることは本当に予測できない。
「髪の毛も長いし……て、美羽姉?どうしたん、顔真っ赤やで」
「誰のせいだと…!!スカート離しなさい!!」
ああ、ごめんごめん、と鈴乃がスカートを離すと、美羽は鈴乃からすこし距離をとる。
「そんな警戒せんでも……もうせえへんって」
鈴乃が苦笑を浮かべるが、美羽が警戒をとく気配はない。
鈴乃は仕方ない、と諦めたのか、その距離を保ったまま話し始めた。
「夏場とかもずっとその格好やったけど、暑なかった?なんでずっとそんな格好してるん」
「…待ってるの」
「え?」
暑くないわけじゃない。むしろ、すごく暑かった。
けれど、この格好は……
「ううん、なんでもない。好きだから、かな」

☆☆☆

ブラブラと近くの海に散歩にでた。
最近ちっとも来てなかったな、と思う。
「……なんでこんな格好…か、」
好きだから。それは確かに間違いじゃなかった。
でも、それだけじゃなくて……

「わかってるんだけどね、無理だって」

ぽつりとつぶやいた言葉は夕焼けに溶けた。
あまりにも夕焼けがきれいで、泣きそうになる。

「ちくしょう」

「美羽?」
「志蕗……」
たまたま通りがかったのだろう、志蕗が道路の方から歩いてきた。
「どうした?」
「……ううん、ちょっと、ね」
「またあいつのことでも思い出したか?」
「……」
こういうことに志蕗はするどい。
まあ、だからモテるのか、とうっすらと考える。
「鈴ちゃんがね、どうしてこんな格好してるんだって」
志蕗に事情をはなす。
志蕗が一番つきあいが長い。そのせいか、ほかの人たちよりも分かってくれてるし、いろいろと話しやすい。
「こんな格好してても、無理だって、わかってる。私がそうでも、あの人はそうじゃないかもしれない。それに、あの人には好きな人もいた。私じゃない、女の子。」
志蕗はだまって聞いてくれていた。
この話を志蕗にするのは何度目だろう。
そのたびに志蕗は笑わないで聞いてくれる。
「この髪だってね、あの人が似合うって、言ってくれたんだ。服だって、そう。本心じゃないこともわかってたけど、でも、嬉しかった」
ザザ……波の打つ音がやけに大きく聞こえる。あんなにまぶしかった夕焼けも、ほとんど沈みかけている。
「だから、今世でも、似た格好をしてれば、見つけてもらえるんじゃないかって。ミヤはきっと見つけてくれるんじゃないかって」

それは前世の記憶。
美羽には前世の記憶があった。
迷子になった前世の美羽、リウ。
リウを見つけだしてくれたのはいつだって、許婚のミヤだった。

「ねえ、志蕗。ミヤはもう、私のことなんか忘れちゃったのかなあ…」
志蕗は答えない。
「もう、迎えに来てくれないのかなあ…」
「あの人は、きっとまたお前を見つけてくれるよ。それまでは俺が美羽を見つける」
「……うん」
「今はまだ、迎えにこれなくても、いつか来てくれるはずだから、さ。それまでは」
「ありがとう、志蕗」

真っ暗になった海に、一粒、二粒、と、涙が落ちた。
こぼれる嗚咽を波が隠して。

☆☆☆

「いやあ、泣き出したときはどうしようかと。おまえ、酷いときほんとに超音波みたいな声だすし」
「超…っ!!そんな声だしてない!」
「いーや、でたことあったね」
「なーいー!!!」
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[ 2013/10/02 05:05 ] 小説 針野家 | TB(0) | CM(0)

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