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フタリのナミダ


今日、彼にはいつもの元気がなかった。

どうしたの?と聞いても、なんでもないよ。
聞きたい答えは返ってこなかった。

最近、いつもより多くの仕事を任されていたのを知っていた。そのせいで体調を崩したことも。
それでも、休まずに仕事に行こうとする彼をとめたけど、いつも大丈夫、と言って出かけていった。

21:36。
おかしいな、いつもなら、仕事が終わったらすぐ連絡くれるのに。
今日は21:00までじゃ、なかったのかな?
もしかしたら、疲れてるのかな?
それとも、

やっぱりなにかあったのかな?

電話してみようか。
携帯電話の通話ボタンを指でなぞる。
…もう少し、待ってようかな。

prrrrr…

メールだった。
【起きてる?】
たったの五文字。絵文字もなくて、やっぱりいつもの彼らしくなかった。
たまらなくて、電話をかけた。
ツーコール。
彼に繋がった。
「もしもし」
声をかけても反応がない。
「どうしたの、大丈夫?」
大丈夫なわけない。でも、それ以外にかける言葉が見つからない。
彼が一言呟いた。
『好き』
ほんとに小さな声で、危うく聞き逃すところだった。
「うん、私も好きだよ」
小さな声も聞き逃すまいと集中すると、嗚咽を堪えるようなそんな音とも声とも言い難いものが聞こえた。
泣いているのだろうか。
「どこにいるの?」
できるだけ優しく、声をかける。
『家の、、、前』

急いで玄関の戸をあけた。
そこには彼が立っていた。
私は毛布を彼にかけてあげて抱きしめた。
「おかえりなさい」
頭上で鼻をすする音が聞こえた。

晩ご飯を暖めなおして出す。
彼の正面に座ると、彼はまた泣き出した。
「ごめん、ごめんな」
ただただ謝る彼はとても小さく見えた。

何があったのだろうか…聞いても、いいのかな…

「会社で…」
ぽそり、ぽそり、と彼が話し始めた。
「上司に、さ…叱られたんだ」
彼の言葉ひとつひとつ大切に聞き取る。うん、うん。私は相槌しかうてなかった。

彼が言うには、上司の人に、最近弛んでるんじゃないのか、と言われたそうだ。
確かに、もともと、ミスは多い人だった。それでも、私と結婚して、ミスを減らそうとがんばってたのに、体調を崩してても、無理して…

今朝、やはり、体調がよくなかったらしい。
それでも、やらなきゃいけない仕事がたまってるから、と無理をした、と彼は告げた。

出勤して、仕事して、廊下を歩いているときだった。上司が歩いてきたのを避けようとした瞬間、めまいを起こし、バランスを崩して、書類やらファイルやらをぶちまけたそうだ。

すみません、すみません、何度も謝りながら、書類をかき集めていたところ、上司の機嫌が悪かったらしく、叱られたらしい。

結婚して気が緩んでるんじゃないのか、注意散漫じゃないか、彼の体調など知らない上司は次から次へと言葉をぶつけたが、彼の頭の中には入ってこなかった。そして、彼は上司の説教の最中、とうとう倒れてしまった。

目が覚めたら会社の救護室で、すぐに仕事に戻った彼にぶつけられた言葉は彼に向けてのものではなく、私に向けてのものだった。
体調管理も満足にできないのか。
旦那の体調も管理できないような女を娶るからだ。

ああ、私が今朝、彼をきちんと止めていれば。もっと早く、体調が優れないことに気が付いていれば。体調を崩さないよう気をつけていれば。

彼はこんなにも苦しまなかったのに。

頬を伝う涙がやけに熱く感じた。
彼は私に私は彼に何度も謝った。

ごめんな。俺のせいで。お前が怒られて。俺がもっとしっかりしてれば。お前を守ってやれなかった。

ごめんね。私のせいで。あなたが怒られて。私がもっとしっかりしてれば。あなたを支えてあげられなかった。

二人はお互いに自分を責め、謝りながら、泣き続けた。終いにはお互い、何に対して泣いているのか分からなくなり、ただただ涙を流し続けていた。
ああ、こんなに泣いたら、明日、目が腫れちゃうなあ…まあ、いいか。明日は日曜日だ。今日は思いっきり泣いて、明日はゆっくり休んで、それから、またがんばろう。

泣いたっていい。受け入れてあげる。
一緒に泣こう。一緒に笑おう。
誰かが言ってた。悲しみは分け合って半分ずつに、喜びは共有しあって二倍にって。
そうやってさ、これからも一緒に悩んで泣いて喜んで、生きていけたら幸せだと思うんだ。





とくに何っていうのはないけれど。なんとなく。書いてみたい衝動に駆られたので。
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[ 2014/02/22 07:56 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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